西会津は、最初のレジデンスアーティストがリトアニアのアーティストであったことから始まり、リトアニアとの交流を長らく続けてまいりました。2016年には初めて交換の形で、滝澤徹也(出ヶ原和紙・現代美術)とミグレ・レベディニカイテ氏(東洋テキスタイル史・フェルトアーティスト)による会津の伝統をキーにしたアーティストレジデンスを行いました。レジデンス終了後から双方にとって有意義だったその成果を継続するべきという機運もあり、このたび再びリトアニアと西会津、お互いの伝統文化と新しい表現の交換レジデンスを行うことになりました。今回はリトアニアの伝統的なステンドガラスを学びコンセプチュアルな表現を行うダリア・トゥルスカイテ氏と、日本の陶芸家、小孫哲太郎氏にその役を担っていただきました。
西会津で再生した会津藩御用紙、出ヶ原和紙を学び、驚くことに短期間で和紙のほぼ全ての工程を自らの手で行いました。またダリア・トゥルスカイテ氏はリトアニアの美術学校で副校長を務めることから、子供たちの営みに着目し、廃校となった旧新郷中学校の木造校舎である西会津芸術村に残る子供たちの痕跡、落書きを紙で刷り取るなどの制作を行い、場所に残る記憶を視覚化しました。
西会津の友好都市を含む沖縄の陶芸を学び、様々なメディアとのコラボレーションなども行う日本の陶芸家、小孫哲太郎も同時期に西会津に滞在し、ダリア・トゥルスカイテ氏と交流し西会津の縄文文化を学び、西会津の土を採取し、ブロックを作り、組み上げ、表面にリトアニア語と日本語、地図などを西会津の赤土を顔料に使い文様として描き、再び分解し芸術村校庭にて地域の素材を燃料とした野焼きパフォーマンスを行い(10月30日)、それを組み上げ、ゲートのような巨大な作品を制作しました。
2020年2月から3月中旬にかけては、小孫哲太郎氏はリトアニアに滞在しアニークシェチュイ・アート・インキュベーターを拠点に制作を行い、ダリア・トゥルスカイテ氏が副校長を務めるヴィリニュス市のJ. J. ヴィエノジンスキー芸術学校や、カウナス市のカウナス・アンタナス・マルティナイツ芸術学校など3都市5会場で10数回にわたる連日の陶芸ワークショップや講演を行い高い評価を得ました。
これらのアート事業による成果は、そのままでは地域再生につながるものにすることは難しい場合が多いと思いますが、西会津町では、デザイナーや起業家との協働により、アーティストが発見・創造した視点を地域の力とする努力を継続的に行なっており、事業終了後もその努力を多様な関係者と共に続けていきたいと考えています。